「陽気な黒ネコ」の巻

「陽気な黒ネコ」

ある路地裏にとても陽気な黒ネコが住んでいました。

どうしてそんなに陽気なの?
白ネコは尋ねました。

見た目が黒いからね。
黙っていると不吉だって言われちゃうんだ。
だからいっつもおどけて見せてるのさ。

そうなの。
楽しくって楽しくってたまんないのかと思ってたわ。
それでわたし、少し嫉妬していたの、だって私ったら
あまり面白く過ごしていないのだもの。

僕だっていつも黙っていても皆が寄って来る
君のことを羨ましいと思っていたんだ。
ツンとすましていても、みいんな君をなでたがる。

あら、私、ちっともなでられたくなんてないの
誰にも触られないで生きていければいいと思うのよ
あなたのように誰も寄ってこられずに
毎日楽しそうに過ごしていけるのが夢だわ。

ああ、逆になってみられたらいいのにね。

そうよ。そうしましょう。
私はススに転がって黒くなるから
あなたは工場の小麦粉に体をこすりつけて
白くなってみましょうよ。
そうして雨が降ったらまた元に戻ればいいわ。

こうして黒ネコは白ネコに、
白ネコは黒ネコになりました。


陽気な白ネコ、すました黒ネコ

陽気な白ネコには、いままでよりもたくさんの人が
寄ってきて、頭や体をなでたがります。

でもなでられてしまっては、小麦粉が落ちてしまいます。
必死で陽気な白ネコは逃げました。

せっかくみんなが寄ってくるのに
期待に応えられないなんて苦しい。

ツンとすました黒ネコには誰も寄ってきません。
これまでたくさんの人にちやほやされてきた白ネコには
なんだか物足りません。

すましているのが楽しいのも、誰かが寄ってきてくれるからなのね
これじゃちっともつまらないわ。


ああ、早く雨が降ればいいのに。

ところがしばらく雨は降りませんでした。



ようやく雨が降り、黒ネコも白ネコも
やっと戻れると想いました。

あれ、君、灰色の白ネコになってるよ。

あら、あなたも灰色の黒ネコよ。

雨が降らない長い間にすっかり色がついてしまっていたのです。

こうして2匹は、白でも黒でもどちらでもなく、
人に寄られもせず、避けられもせず、ただのネコとして
陽気にもならず、ツンとすましもせず暮らしましたとさ。